掲載日 2020年7月6日
大学卒業後、十津川村にUターン
父から継いだタクシーから事業を拡大
小学校まで十津川村で育ち、中学校と高校は大阪、大学は東京と地元から離れて過ごしていましたが、大学卒業後実家に戻り、父から村唯一のタクシー会社を引き継ぎました。東京から十津川村に戻ってきてまず驚いたのは、村の人たちの温かさですね。東京では通りすがりの他人に挨拶をすることなどありませんが、十津川村では初めて会う人もみな気さくに話しかけてくれます。30分くらい話をしてから「ところであんた誰やったっけ」みたいなこともしばしば。タクシーの運行や荷物の搬送といった仕事をしていると、そうやって村の至るところに知り合いができていきます。山の中で人口も多くない分、みなが家族のように接してくれます。たまたま仕事で立ち寄った先で、近所の人が畑にあるキャベツやピーマンなどその時の旬の野菜をおすそ分けしてくれることもありますね。
タクシー以外にプロパンガスの販売や浄化槽の保守点検などの環境サービスまで事業を拡大したのも、実はそんな人とのつながりがきっかけでした。仕事中に知り合い仲良くなった、各家庭の汚水や生活排水を汲み取る業者の方に「これから環境に対して厳しくなるし、需要もあるから免許をとった方がいい」と言われたんです。村内にある同業者たちの中でも一番早く環境に関わる仕事に手を付けたと自負しています。時代を先取りし、それまで全く関わりのなかった分野の事業を始められたのは、村の人の温かさのおかげとも言えますね。
辛いときを乗り越えられたのは
村民同士の仲の良さがあったから
長年仕事に携わっているとやはり困難もあり、特に平成23年の水害の際は大変でした。仕事が全くなくなってしまったんです。幸い他の事業があったので会社はなんとか持たせることができましたが、経営はかなり厳しい状況でした。そんな時にも、仲良くしてくれている役場の人が相談に乗ってくれたり、村の人が仕事を頼んでくれたり、人と人との助け合いで乗り越えることができました。十津川村周辺にはタクシー・バス会社は当社しかないので、中学校の部活の合宿や修学旅行、忘年会や新年会など、何かと協力することができ、それがやりがいにもなっています。
環境サービスでも公共の建物を管理させてもらったり、荷物の搬送も村のホームページに載せてもらったり、観光のお問い合わせがあったら当社のタクシーを薦めてくれたり、十津川村以外でも奈良県の仕事を紹介してくれたり。本当にありがたいですね。今回のコロナ禍でお客さんが減ったときにも、ずいぶんと助けていただきました。
コロナ禍を乗り越え、村の魅力を活かした
観光業の発展のために挑戦したい
実は少し前から熊野古道を歩くツアーが外国人に人気で、有名な中辺路と呼ばれるルートには多くの人が挑戦してきました。そこで、中辺路を踏破した外国人が、次はより険しい、十津川村を経由する小辺路というルートに注目するのではないかと考え、熊野古道の小辺路をPRして外国人を誘致していこう、と旅行業の方と話していました。新型コロナウイルスの到来はそんな矢先だったんです。今は高野山もガラガラで、普段いかに外国人観光客が多かったかということがわかります。
コロナが落ち着いたら、熊野古道や玉置神社など十津川村の魅力をもっと発信し、観光業で村の発展に貢献していきたいです。ゆくゆくは村内の旅行業者と連携して周遊バスを運行させたり、行政と連携して十津川の観光名所を巡る企画を立ち上げたりすることも目標です。仕事を頑張ることで、助け合ってきた村に還元していければと思っています。