7村人

ジビエの魅力発信を通して
狩猟への理解とジビエ活用の促進を目指す猟師姉妹

中垣 夏紀さん(左)
中垣 十秋さん(右)

姉妹で猟師として活動しながら、ジビエを活用した事業を幅広く展開しています。

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掲載日 2024年5月2日

猟師に対する偏見を払拭するため、
狩猟免許取得を決意。

十秋さん_私たち猟師の仕事は、人々の生活を守るためにシカやイノシシなどを捕獲し、森の生態系を守ること。農作物が食べられたり、林業に利用する樹木が被害を受けたりと、野生動物による獣害は全国的な課題になっています。しかし、その対策としての狩猟の重要性はあまり認知されていません。そのことを痛感したのは、高校2年生の時に参加した地域おこしイベントでのこと。猟師である父の手伝いで鹿の唐揚げを販売していたところ、「野蛮だ」「可哀想だと思わないのか」といった心ない言葉をかけられました。そこで、若者である自分が猟師になり、この仕事の意義を伝えていこうと考え、高校3年生で狩猟免許を取得。卒業後、猟師である父とともに働くようになりました。

夏紀さん_私はもともと十津川村で保育士をしていました。父と妹が猟師としてがんばる姿を見て、私も獣害被害の防止に携わりたいと思うようになり、4年前に猟師免許を取得しました。狩猟やそれにまつわる事業は認知度が低く、若い世代で進んでやろうという人も少ないというのが実情です。それなら、自分が率先して事業を立ち上げてみようと思い立ちました。

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“命”を無駄にしないために、
ジビエの多角的な活用を実践。

夏紀さん_朝は、自分たちが仕掛けた罠の見回りから始まります。狩猟は自然が相手。1日に5頭捕れたり1カ月間全く捕れなかったりと、日々の捕獲頭数にはバラツキがあります。捕獲したシカやイノシシは、その日の内に処理しなければいけないので、多く捕れた日は忙しいですね。何より大事にしているのは、肉の鮮度。そのため、他の猟師さんとも密に連携しながら、生け捕りにした個体のみを取り扱っています。

十秋さん_十津川村は捕獲頭数が多く、以前は食べきれない分を廃棄してしまう状況が続いていたそうです。数年前に父が食肉加工施設を村内に建てたことで、血抜きや内臓処理、精肉処理や冷凍保存が迅速にできるように。命を無駄にせず、おいしく安全なジビエが提供可能になりました。
現在は狩猟や食肉加工と並行して、クラウドファンディングを経てオープンした会員制ジビエ料理店「まると」も運営しています。私たちが捕獲・処理したおいしいジビエ料理を食べていただきながら、お客さまとコミュニケーションを取り、狩猟やジビエに対して理解を深めてもらえる場にしたいと考えています。また、新たに始めたジビエペットフード工房や、現在立ち上げを進めている皮革製品を手掛ける会社など、さまざまな事業に挑戦しています。
高校を卒業した当初は、ビジネスに関する知識が全くない中で事業を進めなければならず、大変な時もありました。クラウドファンディングの立ち上げ方や、商品のパッケージデザインなど、十津川村在住のデザイナーの方にさまざまなことを教えていただき、実践的にビジネスを学んできました。経験がそのまま知識やスキルに結びついており、成長を実感しています。

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十津川村の活性化につなげ、
日本のジビエ活用をリードしていきたい。

十秋さん_今後の目標は、ジビエを通して十津川村を活性化すること。事業を拡大して食肉加工施設を増設するなど、雇用を増やしたいと考えています。十津川村では、若い世代の人口流出が課題になっています。私たちと同世代の若者に、「十津川村に戻って働きたい」と思ってもらえるように、またそう思った人が実際に活動できるように、力を尽くしていきたいです。

夏紀さん_十津川村には食肉加工施設が1か所しかないため、多数の捕獲頭数に対して処理が追い付いていません。そのような事情もあり、食肉加工施設を増やしていきたいと考えています。施設だけでなく、食肉加工を担う技術者も足りていないため、技術者育成にも注力したいという思いがあります。将来的には、ジビエを十津川村の特産物にしたいですね。さらには、日本全国におけるジビエ活用をリードし、“動物たちの命を無駄にしない取り組み”を促すモデルケースとなれるよう、活動していきたいです。

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