形容詞の十津川言葉

(三) 形容詞の十津川言葉

(1)形容詞の正しいつかい方

事物の性質や状態を述べる言葉を形容詞という。今美しいという言葉についてその使い方をしらべてみると

この花は美しかろう
この花は美しくなる
この花は美しかった
この花は美しい
花が美しい時に行きます
花が美しければ見に行きます

上のように形容詞も動詞と同じく活用する。然し形容詞には命令形がない。

形容詞語幹未然連用終止連体仮定
うに連なるた、なるに続く言いきる時、ことに続くば、どもに続く
美しい美しかろかっ
く
いいけれ
高い高かろかっ
く
いいけれ

(2)形容詞の連用形の十津川言葉

十津川に於ては連用形が「なる」に連なる時は語尾が変化する

 (イ)

「美しくなる」という言葉は「美しゅうなる」とつかう。ローマ字で書いてみると utukusikunaru が utukusyunaru となる。つまり ik が y となる。

 例苦しくなる苦しゅうなる
恋しくなる恋しゅうなる
優しくなる優しゅうなる
嬉しくなる嬉しゅうなる
淋しくなる淋しゅうなる

 (ロ)

「高くなる」という言葉は「たこーなる」とつかう。ローマ字で書くと takakunaru が takonaru となり、aku が o となる。

 例近くなるちこーなる
固くなるかとーなる
有難くなるありがとーなる
つらくなるつろーなる
無くなるのーなる
甘くなるあもーなる

 (ハ)

「寒くなる」という言葉は「さむーなる」となる。ローマ字で書くと samukunaru が samunaru となり、ku が脱落する。

 例軽くなるかるーなる
よくなるよーなる
広くなるひろーなる
遠くなる嬉しゅうなる
とおーなるしろーなる

(3)形容詞の仮定形の十津川言葉

形容詞の仮定形が「ば」に連なる時は動詞と同様語尾が変化する。
例えば「面白ければ」という時、「面白けりゃー」という。ローマ字で書くと omosirokereba が omosirokerya となる。つまり eb が y となる。

 例低ければひくけりゃー
よければよけりゃー
悪ければわるけりゃー
高ければたかけりゃー
近ければちかけりゃー

(4)形容詞の終止形及び連体形の十津川言葉

十津川に於ては形容詞の終止形及び連体形で「い」を用いていないことがある。つまり語幹の終わりが、ア段になる時は語尾のアクセントを低くしてのばす。

 例つらいつらー
うまいうまー
弱いよわー
短かいみじかー
深いふかー
早いはやー
にがいにがー
かたいかたー

(5)形容詞の十津川方言

方言説明
・あざといあさはかなこと
・あまあ安易
・あほくさあ馬鹿らしい
・あかりいあかるい
・いきどおしい息苦しい
・いそしい
・いさしい
達者だ
・いさしい久しい
・うたてーきたない
うるさい
わづらわしい
・うつくしいよごれていない
・うといばか
・うるさあきたない
わづらわしい
・えぐい根性のわるいこと
・えんげつなあ人情味がない
しんらつなこと
・えらい甚だしい
ひどい
・おしいほしい
・おとろしいおそろしい
・おそい (仕事がおそい)にぶい
・おぼこい無邪気
・かいだるいだるい
物足りない
・かしこいずるい
・かたあ実直である
信義を守る人
・かたこうなあ頑固である
・きついひどい
無情である
・きづつなあ気苦労である
・きびしいいそがしい
・きまづい拙劣
不快
・きようというとましい
いまわしい
・くさあ疑わしい
・ぐづいのろい
にぶい
・くらがしい暗い
・げすい下品である
・けなりー
・けなるい
うらやましい
・けぶたあ敬遠する気持
・こまい小さい
・こまこい小さい
倹約すること
りんしょく
・こわあしんどい
・さくいねばりがない
・ざすい粗雑である
・さらあ新しい
・しつこいくどい
・しぶとい強情である
・じゃまくさあ面倒である
・じょさいなあぬけめがない
・しるい
・じるくたあ
ぬかるみである
・しわあ歯ぎれのわるいこと
しつこいこと
強情
・しんどいだるい
・すこいこすいこと
ひそかに自利をはかること
・ずつなあつらい
頭痛がする
・せせこましいせまくてうるさい
・せばあせまい
・せわしい忙しい
・そおがしいさわがしい
・そそくさあ粗忽[そこつ]である
・ちょろい
・ちょろこい
にぶい
弱い
鈍感
・どすこいこすいこと
ひそかに自利をはかること
・とつけもなあ途方もない
・とろい
・とろこい
・とろくさあ
にぶい
弱い
鈍感
・どえらい大きい
ひどい
・どんくさあ不器用なこと
・なさけなあつらいこと
・なまみだあ気の弱いこと
・なるい平らである
・にくたらしいにくらしい
・ぬくい暖い
・ぬるいのろい
にぶい
・ねついていねいである
・ねばあしつこい
・ねばっこいねばい
・ねぶたあねむたい
・のぶとい大胆
おうちゃく
・のろいにぶい
・はしかあ痛がゆい
気がつよい
御飯など固い
・はばいいがめつい
先のするどいこと
・ひだるいひもじい
・ひらくたあ平たい
・ひわかあ若い
未熟
・ばばいい
・まばいい
まぶしいこと
・べたこい平たい
粘り気がない
・へちゃこい平たい
・ほしい措しい
・ほうとくなあ心細い
・まさしい人の災難を気味よく感ずること
・みとうなあ美人でないこと
・むごい
・むごたらしい
残酷である
・むさくるしいむし暑くて苦しい
狭溢で気がふさがる
・むたらこい
・もたらこい
・もったらこい
物事がよりかかって気分の重いこと
・めんどい煩わしい
外聞がわるい
・やすいたやすいこと
・やにこい弱い
貧弱
意気地がない
・ややこしい複雑なこと
怪しいこと
・やらこいやわらかい
・よわくたあ弱い
気力がにぶい
・ひよわあ弱体である