1村人

大自然の恵みを趣味に仕事にフル活用
ライフワークである“朝市”を通して
村を支える人気者

前岡 ノブヨさん

村の朝市をライフワークに活動し。村の方たちかたはノブちゃんの愛称で慕われています。

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掲載日 2020年7月17日

好き嫌いが多く、体も弱かった前岡さん
結婚を機に十津川村で自然に囲まれた生活をはじめる

若いころは街中で美容師をしていました。その後十津川で美容室を開業する時に、設備のことでやってきた電気屋さんが今の主人です。結婚して上湯川地区にきたんですけど、大自然に囲まれた生活に不安はありませんでした。ただトイレが家とは別の棟にあるので、日が沈んでからトイレに行くのは怖かったですね。
上湯川での生活にもすぐに慣れ、子どもを背負って大自然を散策することが楽しみになりました。山を眺めていると猟師さんが鹿を獲るのが見えて応援したり、春は野イチゴを取って食べたり、冬はつららをかじったりと毎日がおもしろいことだらけ。それは今も変わりません。
もともとは食べ物の好き嫌いが多くて子どもの頃から体が弱かったんです。十津川村での暮らしを始めた頃も村のお食事処では私だけ苦手なものは避けて出してもらっていました。ところがある日、間違えて苦手にしていたネギを食べてしまったんです。そしたら食べられたんです!地元の畑で自然のまま育てられたネギは食べることができたんです。それがきっかけで変わりました。自然の恵みを正しく美味しくいただけるようになりました。例えば夏野菜は体を冷やすものだから冬はあまり食べないようにするとか、季節のものを旬のときに食べることでどんどん健康になり、今では本当にたくましくなりましたね。同窓会で久しぶりに会う友人からはいつも「変わったね」「元気になった!」と言われます。

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活動の幅を広げていく中で始めた「朝市」
村の人気者“ノブちゃん”の誕生

今まで苦手にしていた野菜も自分でつくったら食べられるんじゃないかと思い立ち、先ずは畑をはじめました。最初はホウレン草をつくろうとして失敗してしまったんですけど、その後、義父にすごく丁寧に教えてもらってすぐにできるようになりました。自分でつくった野菜を食べるようになって健康になり、役場で行われる健康講座にも通い始めました。そこで村の人たちと今まで以上にたくさん話をするようになりました。
そうして役場に出入りするようになって講座を受けるだけでなく、自分で育てた野菜や人からもらったもので、村の人から教わった料理をつくって、余ったものをおすそ分けしたりしてました。そのうちに、前の村長さんから私が所属していたJA女性部に、「朝市」をしてみないかと声をかけられてしまいました。村を背負って十津川村の美味を村外の人に届けるというプレッシャーもあったんですけど、とにかくできることからやってみようと活動を始めました。いろいろな地方の朝市を調べて勉強して、必要な許可もたくさん取りましたね。

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診療所の空きスペースで始まった朝市が いつの間にか“ノブちゃんのお店”へ

最初の朝市は診療所の空きスペースから始まり、その後は道の駅に移動して、今では平谷地区の地域交流センター「いこら」で日曜日限定の“ノブちゃんのお店”を出しています。 とにかくずっと勉強です。今でもどうしたら喜んでもらえるか毎日考えてます。でもそれが楽しくて、いつの間にか20年以上朝市に携わっています。
“ノブちゃんのお店”では農産物だけでなく加工品も取り扱っています。自分でつくった野菜や果物はもちろんですが、主人が育てたキノコや山から取ってきたハチミツや知り合いに分けてもらった食材など十津川村でできたものを必ず使います。
パン作りは娘に教えてもらいました。山菜ちらし寿司は主人に手伝ってもらってます。ゆうべしの作り方は朝市仲間から教わりました。
十津川村の山、水、空気、人など周りの環境に支えられて毎日楽しく生きています。
朝市に来るお客さんも“ノブちゃん”の名前を聞いて駆けつけてくれる人がたくさんいて嬉しい限りです。まだまだ休めないですね。

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編集後記

取材後に加工場やストックヤードにあるおすすめの食材を見せてもらいました。

モロヘイヤ
先ず出てきた食材が緑色の粉??抹茶かなと思っていたらモロヘイヤでした!
畑で育てたものを乾燥させて粉にしたそうです。これを生地に練り込んでつくるモロヘイヤパンは“ノブちゃんのお店”一番人気の商品とのこと。
ブルーベリー
同じく畑で育てたブルーベリーが冷凍されていました。ジャムをつくるそうです。美味しそうだったので一粒いただいて食べてみました。シャリシャリという食感とさわやかで自然な甘みが口の中にすっと広がります。人工甘味料を使ったお菓子によくある押し付けのような甘みやしつこい後味は皆無。これだけで立派なデザートですね。
ハチミツ
ノブちゃんのご主人が山の中にあるハチの巣から採取した天然ハチミツ。ノブちゃんがスプーンですくって味見させてくれました。少し口に含んだだけなのに一気に広がる香りと甘み。ただこちらもブルーベリーと同じく後味はすっきりさわやか。鼻から抜ける山の木々の香りが心地よいです。
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