2村人

ニワトリ700羽と暮らす悠々自適ライフ
十津川の特産品でビジネスを生み出す
お茶目な開拓者

澤渡 成文さん

周辺の山を自らの手で切り拓き、動物や木々の世話をしながら生活されています。

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掲載日 2020年7月17日

原点に立ち返って人生を考えてみた
山を開拓して手に入れた自由

十津川村で生まれ、小さい頃はここから少し離れた所に住んでいました。もともとここは米を作るために毎年春から秋まで生活の拠点にしていた場所。中学生からは十津川村を一旦離れ、社会に出て鳥取で会社の経営もしていましたが、50代になってふとこれからの身の振り方を考えようと、十津川村の実家に戻ってきたのが今の暮らしのきっかけです。
これから何をしようか考えながらも大自然の中でのんびりと、仕事のことも考えず悠々自適に暮らしていたんですが、「どうせならきれいにしてやろう」と、すっかり荒れて耕作放棄地だった土地を切り拓き、ゆずや桜の木を植え始めたんです。それからはニワトリやウサギを放し飼いにしたり、池を作って鯉や金魚を泳がせたり。鳥取の会社では外構工事を主に扱っていたので、この敷地の設備を整えるのに、その時の経験が活きてくれました。
村を離れて町に住んでいた頃は、周りに家がたくさんあって、ソフトボール大会など地域交流の行事も盛りだくさんでした。そうして常に色んな人と関わりを持つことは、それはそれで楽しいけれど、今の生活も気に入っています。周りを見回しても家1軒ありません。世間のしがらみや面倒がなく、本当に自由な時間を過ごすことができます。だからといって全く人との交流がないわけではありません。仕事で町に出た際に取引先の人と話したり、役場で職員の人たちに構ってもらったりもできますしね。

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実はやり手の営業マン?
放牧鶏卵で特産品ビジネスを開拓

本気でここに住もうと思ってから、かれこれ7年。生活していくには何か手に職をつけなければならず、土木職は年齢的に難しいと感じていたとき、目を付けたのがニワトリでした。当時すでにうちには50匹のニワトリがいて庭を駆け回っていましたが、卵の販売などはしていませんでした。しかし「これや!」と思ってニワトリをどんどん増やし、卵の生産・販売という事業を始めたんです。
今では総勢700羽、そのうち卵を産むのは350~400羽ぐらい。さらにその中で売り物になる卵となると1日300個ほどで、なかなか多くは得られません。ニワトリを放し飼いにしたのは、元気に動いているとたくさん卵を産むのではと思っていたからなんですが、大量に販売するなら施設でしっかり管理しないといけないようですね。でもうちのニワトリたちは朝勝手に出て行って、外では卵を産まず、ちゃんと自分で小屋に帰ってきてから産むんですよ。たまに外で遊びすぎて卵を産みたくなって走って帰ってくる姿を見ると、何とも滑稽でかわいらしく思います。
そして週に5日はその卵をもって外回り。主に村内の「ホテル昴」やJAならけんの直売所「まほろばキッチン」、「よってって」という産地直送の店に卸しています。「よってって」は奈良、和歌山、大阪の各地で好きなところに卸せるのが魅力です。神戸にも出したいと前から思っているのですが、むしろ在庫が足りないくらい。ビジネスは難しいですね。

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十津川はちみつ、ブランド化構想
村に名物を作りたい

これからニワトリを1000羽に増やすのもいいなと思っているんですが、パック詰めが面倒でね。次に取り組みたいのはハチミツです。今のところは遊びでミツバチの巣箱を作ってハチミツを採っていますが、将来的には「大間のマグロ」のように「十津川のハチミツをブランド化できないかと考えています。今、十津川村には「十津川といえばこれ」という名産がありません。個人でハチミツを採って人にあげたり売ったりはできますが、十津川村の名産品として、全国に通用するブランドにしたいんです。
十津川村のハチミツが普通のハチミツと違うのは、純度が高いところ。都市部にもいるような一般的なニホンミツバチは、近くの花畑や草木など色んな草花からミツを集めてきますが、山の中のミツバチは、巣箱から出て真上に向かって飛び、カシやトガの木の花からミツを集めてきます。だから純度が高く、雑味のない良質な密が採れるんです。
ブランド化の第一歩として、今は保健所の許可が得られる加工場を作ろうと計画中。また、若い子に遊びにも来てほしいので、さらに山を整備して「ピザ窯エリア」も作りたいと思っています。これからも楽しみは尽きません。良かったら遊びに来てくださいね。

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村人のツボ

放牧鶏卵
実は自宅でとれた卵は食べない澤渡さん。「味の違いを聞かれても食べないからわからないので、『その辺のと同じや』と言っている」というお茶目な一面も。いえ、そんなことありません。後日いただきましたが、村の特産品に選ばれているだけあって、普通の卵とは全く違う濃厚さ。放し飼いだからかとても新鮮で、飼料や管理による人工的なものではない天然の旨みを感じられます。
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天然山花はちみつ
希少とされる国産の天然はちみつ。海外産のいやな渋みやしつこさなど一切なく、それでいてしっかり甘い、どんなものにも合いそうな逸品でした。紅茶に入れるもよし、トーストにかけて食べるもよし。砂糖代わりに煮物やきんぴらに使うというご家庭も。是非試してもらいたいです。
すだちやみかんも
とにかく果樹が豊富な澤渡さんのお庭。柑橘類も採りきれないほど生るのだとか。すだちがとてもいい香りを周囲に放っていました。後日サンマにかけておいしくいただきました。
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